ジャズ・ミュージシャン、エスペランサ・スポルディング。
31 歳にして、4 度のグラミー賞に輝いた才能。
彼女のスタイルにも、異彩を放つ個性と信念が垣間見える。
BY JEREMY LEWIS
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「私はここで育ち、インスピレーションを受けながら、学んできたんです。もちろんこの場所のことは、ジャズに出会う前から知っていました」
そう語るのはジャズ・ミュージシャン、エスペランサ・スポルディング。彼女がいる「この場所」とは、ニューヨークのとあるビルの地下にあるジャズクラブ「ヴィレッジ・ヴァンガード」。数々の名だたるミュージシャンが演奏してきた、ジャズの聖地。エスペランサの奏でる斬新で独創的なジャズは、音楽業界に旋風を巻き起こした。彼女はこれまで4 度グラミー賞を受賞し、オバマ大統領の前でも演奏を披露。そんな数々の輝かしい経歴をよそに、自分のキャリアはまだ始まったばかりと彼女は言う。
「学べば学ぶほど、自分にはすべきことがまだまだあるということに気づかされますね。そして目標もどんどん高くなっていくんです」
これまでのキャリアを振り返りながらそう語る彼女は、自信に満ちていた。そして、「だから、私のキャリアはまだ始まったばかりなんです」と続けた。
エスペランサの音楽の才能は、幼い頃から際立っていた。事実、5歳にしてすでにバイオリニストとして、オレゴン州ポートランドの交響楽団で演奏をしていた。クラシックからジャズへと転向したのは15 歳の時。彼女はジャズを「即興音楽」と表現する。
「ジャズって決められた譜面や旋律がないから何が起きるかは予測できないけれど、今そこで生まれている何かグルーヴのようなものは感じ取れますよね」と、型にはまらずにその場で生まれるジャズの自由なスタイルについて語る。
「音楽の道に進もうと決めた時、ジャズ以外にやりたいことなんてないと思ったんです」こうして彼女は奨学金で名門・バークリー音楽院へ進み、卒業後、当時史上最年少でバークリー音楽院の講師に抜擢された。
ベーシストであるエスペランサ。大きくて、深く情熱的な音を奏でるこの楽器は一見華奢な彼女には不釣り合いにも思える。しかし一度彼女の歌声を聞けば、そんな印象もすぐに覆される。彼女の歌声は情熱的かつ美しいメロディーを奏で、彼女から発せられる一つひとつの言葉は力強く、心に響いてくる。その歌声のように、エスペランサは強い信念を持ち、それを貫く女性だ。これまでに5 枚のアルバムをリリースし、ツアーを重ね、数々の賞を受賞してもなお、彼女は上を目指し続けている。
「常に目標は高くおいてきました。そのために努力することで、私は成長できるんです」と自身の成功の秘訣を語る。
「知識、スキル、才能、理解力……と必要なことを一つずつ挙げていくとどれもまだ十分ではないけれど、むしろそれが楽しいんですよね」と、いたずらっぽい笑顔を見せた。
“学べば学ぶほど、自分にはすべきことがまだまだあるということに気づかされますね。
そして目標もどんどん高くなっていくんです。だから、私のキャリアはまだ始まったばかりなんです。”
1935年に創業し、ニューヨークならずとも世界的にも有名なジャズクラブ「ヴィレッジ・ヴァンガード」にて。数々の名だたるミュージシャンが、この場所で演奏してきた。
オレゴン州のポートランドで生まれ育ったエスペランサ。2011年にグラミー賞最優秀新人賞を受賞し、脚光を浴びた。
“服は、自分が人にどう見られたいかを映し出すもの。人はどんな風に服で個性を表現して、その日なぜその服を選んだのか。それを考えることが楽しくて、大好きなんです。”
今の「エスペランサ・スポルディング」というアーティストは、考え方や服のセンスにいたるまで、彼女自身が作り上げてきたものだ。
「服は、自分が人にどう見られたいかを映し出すもの。人はどんな風に服で個性を表現して、その日なぜその服を選んだのか。それを考えることが楽しくて、大好きなんです」
彼女自身のスタイルはシンプルだけどユニーク。常に自由で、それは彼女の即興的な音楽のようでもある。エスペランサは服を選ぶ時はいつも、まず最初にワードローブの一番上にある服を手に取り、それに合う服を思うままにコーディネートしているのだそう。自分のスタイルを持つということは大切なこと。他の人にとってはどうでもいいことかもしれないが、彼女はそれを貫いている。
「当たり前のことだけど、人は皆服を着て生活している。裸で街を歩くわけにはいかないわけだし。たとえ自己表現しようとして選んだ服でなかったとしても、それを選んだ理由は必ずどこかにあるはずだし、私はその選択さえも表現のひとつであって、服がその人の個性を表現しているものだと思っています」
独自のスタイルを持つエスペランサだが、着る服のブランドや値段には一切こだわらない。かつて、ジャズがそれまでの音楽の概念に一石を投じたように、彼女もまた積極的に現代の価値観に疑問を投げかけている。
「人の価値というのは、世の中に名を馳せることや、高価なブランド品をたくさん持っているということでは測れないと思うんです」
テクノロジーの進歩やインターネットの発達で世界はどんどんつながっていっている。そんな社会に自分という存在がどれだけ大きな影響を与えられるか、ということが今の彼女の最大の関心。
「私は自分のすることの大小にはこだわりません。それよりも、私自身から生まれる価値観が、社会にどれだけ大きな影響を与えられるかということの方が大切だと思っています」
スタイルとは何か、という本質を突くようなエスペランサのまっすぐな言葉。きっと彼女はそれが何かを知っているのだろう。
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