世界NO.1テニスプレーヤー※の笑顔の理由とは。昨シーズンの圧倒的な成績?全豪オープンでの優勝?それとも、史上最高の年間獲得賞金額?すべてが、素晴らしい快挙だ。しかしそこには、もっとシンプルで、もっと興味深い理由があった。
※ 2016年2月15日現在
BY JED ALGER
まず、ノバク・ジョコビッチはベジタリアンである。とはいえ、彼はそれを誰かに無理矢理勧めるわけでもない。むしろ彼はきっと「他の人にとって何が良いかなんて、自分にわかるわけがない」と言うだろう。ノバクがわかっているのは、今の自分にはそれが合っているということだけ。彼はあらゆること対して常に深く洞察し、貪欲に取り組む。自分にとって良いものを追求し、良くないものは排除する。試してみては判断し、また修正する。それをひたすらに繰り返すのが彼のスタイル。
「プロのアスリートにベジタリアンはあまりいないんだ。これまで、世界レベルでプレーするために、肉を食べることは常識のようなものだったからね。でも、人生において何かを“しなければならない”ことなんて何もないんだ。死ぬということ以外はね」と、ノバクはちょっぴりおどけてみせながら言う。ジョークを交えながらも、知性が見え隠れする彼の言葉。彼曰く、「命は授かりもの」。だからその命を人生でどう成すかは、すべて自分自身にかかっているのだ。
ノバクはこれまで、数々の偉業を成してきた。爆撃や紛争にさいなまれたセルビアでの少年時代を経て、テニスで世界の頂点に立ち、トッププレーヤーとしてのキャリアを築いてきた。しかし彼に言わせれば、まだ挑戦は始まったばかりなのだとか。
「僕は、自分がどこまで行けるかを見たいんだ。それは、テニスだけではなく、人生にも言えること」
これがノバクならではの人生に対するアプローチだ。ヘルシーであり続けることはひとつのゴールだけれど、目的を達成するための手段でもある。
「心身ともに、『 もう一段上のレベルにいけないか?』『 もっと多くの情報を得られないか?』 と、僕は学びに対してハングリーなんだ。常にハングリーでいるって素晴らしいことだよ。その欲をなくしてしまったら、創造力や自由、そして目標、すべてを失いかねないからね」
「プロのアスリートにベジタリアンはあまりいないんだ。これまで、世界レベルでプレーするために、肉を食べることは常識のようなものだったからね。でも、人生において何かを“しなければならない”ことなんて何もないんだ。死ぬということ以外はね」と、ノバクはちょっぴりおどけてみせながら言う。ジョークを交えながらも、知性が見え隠れする彼の言葉。彼曰く、「命は授かりもの」。だからその命を人生でどう成すかは、すべて自分自身にかかっているのだ。
ノバクはこれまで、数々の偉業を成してきた。爆撃や紛争にさいなまれたセルビアでの少年時代を経て、テニスで世界の頂点に立ち、トッププレーヤーとしてのキャリアを築いてきた。しかし彼に言わせれば、まだ挑戦は始まったばかりなのだとか。
「僕は、自分がどこまで行けるかを見たいんだ。それは、テニスだけではなく、人生にも言えること」
これがノバクならではの人生に対するアプローチだ。ヘルシーであり続けることはひとつのゴールだけれど、目的を達成するための手段でもある。
「心身ともに、『 もう一段上のレベルにいけないか?』『 もっと多くの情報を得られないか?』 と、僕は学びに対してハングリーなんだ。常にハングリーでいるって素晴らしいことだよ。その欲をなくしてしまったら、創造力や自由、そして目標、すべてを失いかねないからね」
- “ 自分がどこまで行けるかを
見たいんだ。それは、
テニスにおいてだけではなく、
人生にも言えること” - 撮影は、現在ノバクの自宅があるモナコにて。
- ドライライトウェイトジャケット ¥4,990
- ドライストレッチ
スウェットシャツ(半袖) ¥1,990 - ドライストレッチパンツ ¥3,990
ここまで聞くと、ノバクは心なしか熱すぎる男ではないか、と感じる人もいるかもしれない。しかし、さらに彼は大切にしているというもうひとつのことを教えてくれた。
「重要なのは、バランス。それは、テニスコートの上でも、普段の習慣や考えていることにも言えること。バランスをとるということは、喜びや怒りといった極端な感情を受け入れるということでもある。でもそれが僕にとっては自然なことだし、それも含めてすべてが、バランスなんだ」
弟にとっては、兄として、高校時代からのつきあいになる妻のエレナにとっては、夫として。そして、エレナとの間に生まれた子どもにとっては、父として……魅力にあふれたさまざまな人間性を兼ね備えている。人生のほとんどを世界中の観衆に見つめられて過ごし、数々の功績を挙げながらも、冷静に落ち着いた心を持ち、驚くほどに賢明に、自らの人生を見つめている。することなすことすべてが、彼の人生であるということを、体現しているかのように。
「今の時代、世界でトップになるためには、テニスプレーヤーとしてただボールを打っているわけにはいかないんだ」とノバクは言う。
「テニスだけでなく、そのまわりの人生そのものを整える必要がある。家族、社会性、柔軟性、精神力、喜怒哀楽、好奇心……。これらはすべて、テニス以上に大切なこと」
「重要なのは、バランス。それは、テニスコートの上でも、普段の習慣や考えていることにも言えること。バランスをとるということは、喜びや怒りといった極端な感情を受け入れるということでもある。でもそれが僕にとっては自然なことだし、それも含めてすべてが、バランスなんだ」
弟にとっては、兄として、高校時代からのつきあいになる妻のエレナにとっては、夫として。そして、エレナとの間に生まれた子どもにとっては、父として……魅力にあふれたさまざまな人間性を兼ね備えている。人生のほとんどを世界中の観衆に見つめられて過ごし、数々の功績を挙げながらも、冷静に落ち着いた心を持ち、驚くほどに賢明に、自らの人生を見つめている。することなすことすべてが、彼の人生であるということを、体現しているかのように。
「今の時代、世界でトップになるためには、テニスプレーヤーとしてただボールを打っているわけにはいかないんだ」とノバクは言う。
「テニスだけでなく、そのまわりの人生そのものを整える必要がある。家族、社会性、柔軟性、精神力、喜怒哀楽、好奇心……。これらはすべて、テニス以上に大切なこと」
“ 家族、社会性、柔軟性、精神力、喜怒哀楽、好奇心……。
これらはすべて、
テニス以上に大切なこと”
常に好奇心を持ち、ハングリーに学び、バランスを保つ。ノバクからの極めてシンプルな人生のアドバイス。彼に「成功の秘訣とは?」と尋ねてみると、世界最強プレーヤーの一人とは思えないような、意外な答えが返って来た。「愛すること」―そう言った彼の言葉に、皮肉はまったく感じられない。
「愛こそが極意。自分を愛していれば、他人を思いやることができる。家族を愛し、世界を愛し、テニスを愛する。何が何でも勝つというスポーツのメンタリティーと比べてみてほしい。『ライバルを憎め』なんていう考え。それがいったい何につながるというのだろうか?」
ライバルを愛する方がずっと意味があることだとノバクは断言する。いい試合をし、さらに上を目指すことができるのは、ライバルがいるおかげだと考えている。
「僕にとって忘れられない思い出は、息子の誕生とウィンブルドンでの優勝。そしてもう一つが、2015 年の全仏オープンの決勝戦。生涯グランドスラムを目指してこの試合にかけていた。僕はすべてを出し切ったけれど、結果負けてしまった。でも、あれほどまでに試合や対戦相手を受け入れられたことはなかったんだ。自分でも驚くべきことにね」
ノバクにとって忘れがたい瞬間。自分がそこにいる、この世に存在しているということを実感したと言うべきか、なんとも言葉にならない不思議な感覚に陥ったという。
「勝つことよりも価値のあることがある」最後に彼はそう付け加えた。そう、彼はそれが何かを知っているのかもしれない。
「愛こそが極意。自分を愛していれば、他人を思いやることができる。家族を愛し、世界を愛し、テニスを愛する。何が何でも勝つというスポーツのメンタリティーと比べてみてほしい。『ライバルを憎め』なんていう考え。それがいったい何につながるというのだろうか?」
ライバルを愛する方がずっと意味があることだとノバクは断言する。いい試合をし、さらに上を目指すことができるのは、ライバルがいるおかげだと考えている。
「僕にとって忘れられない思い出は、息子の誕生とウィンブルドンでの優勝。そしてもう一つが、2015 年の全仏オープンの決勝戦。生涯グランドスラムを目指してこの試合にかけていた。僕はすべてを出し切ったけれど、結果負けてしまった。でも、あれほどまでに試合や対戦相手を受け入れられたことはなかったんだ。自分でも驚くべきことにね」
ノバクにとって忘れがたい瞬間。自分がそこにいる、この世に存在しているということを実感したと言うべきか、なんとも言葉にならない不思議な感覚に陥ったという。
「勝つことよりも価値のあることがある」最後に彼はそう付け加えた。そう、彼はそれが何かを知っているのかもしれない。