ふたつの間に息づくもの。それは、髪の毛1本ほどの狭間。ほんのわずかだけれども、そのふたつの両方を持ち合わせている狭間。そして、その隙間でしか見ることができない色がある。2 つの色が混ざり合い、ふちを彩る。例えばそれは、光と影が出会う瞬間。夜明け前。朝というにはまだ早すぎるその時間。夜を脱ぎ捨て、一筋の光が地平線へと伸びる。新たな一日のはじまりが告げられた。その頃、私は眠気を引きずったまま、いつものテーブルへと向かう。ぼんやりとした光とひんやりとした夜明けの空気を感じられる場所であれば、どこだって構わない。世界中が深い眠りから目覚めるこの瞬間に、大きく伸びをする。そのとき、片方の腕は夜、もう片方は光射す朝へと意識を向けて伸ばしてみる。手のひらの上で踊る夢をまだ見つつ、まどろみから覚めて朝の訪れを感じられるように。
光と影。指先でそれを確かめながらその狭間で生きていたい。まるで私のすべてが指先に宿っているかのように、感覚を研ぎ澄ませながら。
言語、肌の色、私たちを取り巻くさまざまなもの。その間にあるのは何かを遮るものではない。その狭間こそ、自分自身の存在に気づくための場所。
ハナ・タジマ/ Hana Tajima
英国生まれのファッションデザイナー。洗練された優雅で快適な服は、世界中の若い女性のファッションに新たな変革をもたらしている。自身の日本と英国からなるルーツに着想を得た機能的かつ現代的なデザインはさまざまな文化に呼応し、その活動は近年国際的な注目を集め続けている。
ブランドブック「The LifeWear Book」の2016年秋冬版が完成。
WEBで全ストーリーがご覧いただけます。是非店頭でも手にとってご覧ください。